「お邪魔しまーす」

と鍵の空いたドアを開けてリビングへ行くと、すでにパーカーとスウェット姿のイチさんがいた。

「小夏、一緒にケーキ食わない?ホールケーキじゃないけど」

そう言ってケーキが入っているであろう箱を掲げた。
有名なパティシエのいる超人気洋菓子店の箱だった。

「食べます!でもここのケーキ、ホールじゃなくてもクリスマス当日の夜によく買えましたね?」

「ここ、社長お気に入りの御用達の店でさ、そのツテで、ね」

こんな時間に食べたら太るとか、そんなのは気にしない。
イチさんが、私と一緒に食べようと思ってケーキを買って来てくれたことが嬉しい。


…っていうか、社長のツテって。