発注業務やら見積書作成やらをもくもくとこなしていたら「緒原」と千葉先輩に声を掛けられ、いつの間にかお昼になっていたことに気づく。


うちの会社で人に聞かれたくない話をする時の定番スポットは、資料室、会議室、または非常階段。

すぐ済むから、先輩にそう言って連れてこられたのは非常階段の踊り場だ。

お疲れ、と缶のホットミルクティーを渡され、先輩は微糖の缶コーヒーをカシュっ、と開けてゴクゴクと飲む。


「…緒原、柳部長と付き合ってるんだって?」


単刀直入に切り出されたそれに、私も先輩に倣いカシュッと開けてひと口飲んだミルクティーを、吹き出しそうになった。


「…っえっ⁉︎えっ⁉︎」

明らかに動揺している私を苦笑しながら見つめて、

「…俺今朝、部長に呼び出されたろ?」

部長に牽制された、そう言って寂しそうに笑う。