あいつ本気だから、と、いつもの美鈴先輩に似つかわしくない寂しそうな笑顔でそう言われて、改めて自分の鈍さを痛感した。

…ああ、私はなんて残酷なことをしていたんだろう。
千葉先輩の気持ちにも、美鈴先輩の気持ちにも気付かないで…

きっと美鈴先輩は千葉先輩のことが好きだ。

今まで、どんな気持ちで私と千葉先輩のことを見ていたんだろう。
歓送迎会の時、私を送ると言って残った千葉先輩を、どんな気持ちで見送ったんだろう。

「…美鈴先輩は千葉先輩のこと…」

言いかけた私を美鈴先輩は遮った。

「私のことは気にするな!私は緒原が好きな千葉を見ているのが好きなだけであって、千葉とどうこうなりたいと思ってるわけじゃない!緒原は今まで通りでいてくれたらいい。私に遠慮なんかしたら容赦なく引っ叩くからな!…だから、千葉にも今まで通り接してやってくれ」

にかっと笑ってくしゃりと私の頭を撫でた。

「…はい…」

言ってはみたものの、これから私はどうしたらいいんだろう…

知ってしまった今、これまで通りになんて振る舞えるのかな。

結局ぐるぐる答えの出ないことを考えながら、私は帰路に着いたーー。