…イチさんの様子がおかしい…

そう思ったのも束の間、噛み付くようにキスをされ、そうしてどんどんキスは深いものに変わっていく。

私の両の腕はイチさんの手1つで頭の上でベッドに縫い付けられ自由を奪われて、貪るように口内を掻き回される。
もう1つの手は服の裾から侵入して、肌を撫で回す。

でも、そこにいつものイチさんの優しさはなくて。
焦茶色の瞳には出会った当時の、何の感情も読み取れない冷たさが滲んでいて。
いつもは満たされるその行為もただただ欲をぶつけてくるだけ、みたいに感じて。

イチさんのことを、初めて怖いと思った。

涙が溢れる。
怖い、悔しい、切ない。悲しい。
色んな感情がごちゃ混ぜになって、それらが全部、涙となって溢れた。

それを見たイチさんがハッとなって力を緩めた瞬間、私はイチさんを突き飛ばしてその場から逃げ出していたーー。