そのまま手を繋いでエレベーターで地下駐車場まで降りた。
人が乗り込んで来たら、繋いだ手は後ろに隠して。
…ずっと、離すことはなかった。

だからイチさんの車に着いた時、助手席のドアを開けてくれたけど、私はなかなか乗れなかった。繋いだ手を離したら、夢が覚めちゃうんじゃないかと思ったから。

そんな私の心情なんかイチさんはきっとお見通しで、だから私の顔を悪戯っぽく覗き込みながら、

「…俺、今日酒全然飲めなかったから小夏、帰ったら付き合って」

家に着いてからも一緒にいられる口実を作ってくれた。

こく、と頷いて私はようやく助手席に乗り込み、イチさんの黒のセダンは出発した。

そして途中のコンビニでお酒とおつまみと、小夏はちょっと飲み過ぎだからとはちみつ黒酢ドリンクとココアも買って、2人で一緒にイチさんの部屋へと帰ったのだった。