イチさんは顔を顰めるけれど、それは決して大げさなんかじゃない。

「あ!柳部長、ここにいらしたんですね!蔭山部長が探してましたよ」

ひょこっと休憩スペースに顔を出したのは千葉先輩と同期で営業事務3年目の笠原先輩。

チラリと何であなたが柳部長と一緒にいるの、と言外に込めた冷ややかな目線をくれた後、にっこりスマイルでイチさんに要件を伝える。

ほら、こういうことなんだよ、イチさん…
女子の妬み嫉みは、時に仕事に支障を及ぼしかねないほどに怖いのですよ…

「…ああ、すみません。これ飲んだらすぐ戻ります」

眼鏡を掛け直して、にこ。その営業スマイルとやらで微笑めば、イチさんの周りにぱぁっとお花が咲き、笠原先輩はお目目をハートにして去って行った。

…いや、アナタホントニダレデスカ…

「…ふーん…分かった、隣人なのは伏せておく」

そう言ってイチさんは残りのコーヒーを飲み干し戻って行った。