「緒原の頭がなぜか俺の腕を引きつけるんだよなー」

「何ですか、その言いがかりは!」

うんうん頷きながらそんなことを言う先輩に思わずぷっ、と吹き出すと、

「アンタたちはほんと仲いいねぇ、毎朝まぁよくも飽きずに」

「…美鈴先輩!おはようございます!」

「もはや、大型犬と小型犬がじゃれてるようにしか見えん」

私と千葉先輩を犬に例えているのは毒島 美鈴(ブスジマ ミスズ)先輩。
私の3個上で入社当時私の教育係をやってくれていた。
緩くパーマの掛かった栗色のロングヘアは後ろでルーズに1つに纏められていて、透明感のあるきめの細かい肌のお顔にはそれぞれベストサイズのパーツが実にお行儀よく並んでいる。

が、その麗しい見目とは反対にすこぶる口が悪く、営業部に配属された初日の自己紹介で、「名字で呼んだらコロス」とその風貌に似つかわしくない目付きで鋭く睨まれ、私は口の悪い美形に縁のある星の元に生まれたんだろうかと本気で思った。