生まれてから一度も染めたことがないという艶のある黒髪は胸下で緩くパーマが掛かっていて、横に流した前髪から覗くキリッとしたアーモンド型の猫目にすっと通った鼻筋、無駄なお肉のないシャープな顎のライン。

まさに大和撫子という言葉がぴったりの彼女は
しかし、そんな見た目とは裏腹にイチさん同様言葉をオブラートに包めない人種だ。

「私にそんな勇気があったら、イチさんとはとっくにどうにかなってるよ」

きゅうりの漬物をポリポリ咀嚼しながら呟く。

ちょっと仲の良いお隣さんという今の関係を壊したくなくて、このままでも充分だと自分に言い聞かせ始めたのはいつからだっただろう。

「まあ、そうでしょうね。今の関係を壊したくなくて何も出来ずにいるヘタレだもんね」

「…うっ」

ほんとに全くオブラートに包んでくれない…
図星を突かれてぐうの音も出ないでいると、

「でも、それを壊さないと前にも後ろにも進めないのよ?」

今度はど正論で攻めてくる。