星南は、金縛りにあったかのように固まっていた。
やっぱり、話すのは時期尚早だったのだろうか。
もう少し、時間を置いてからの方がよかったのだろうか。
だけど…。
何となく、早めに星南に話した方がいいのかもしれないと感じていた。
俺の勘が、そう俺に言ってるように。
「…湊。」
「ああ。」
「私、5つ離れた兄がいるの。
兄は、母親から可愛がられてた。
兄妹格差って…言うのかな…。
兄は、育児放棄されていた私を助けてもくれなかった。
ただ、部屋の片隅で小さくなる私を嘲笑うように兄は私のことを見ていた。
だから私…。
今更、兄と話すことなんてない。
話したくもないから…。」
星南に兄妹がいたこと。
それは、初め知ったけど…。
兄妹との間で、母親の愛情の格差があったのか。
そんな環境にいて、兄も母親も信用出来なくなるのは無理ないよな。
星南の中にはきっと、家族に愛された記憶がないんだろうから。
それにしても…。
聞けば聞くほど、星南を苦しめた母親のことや兄の存在を許すことができない。
「星南…。」
「絶対、会いたくなんてないから。
私には、湊がいてくれればそれでいいの。」
「星南…。」
できれば、星南を家族に会わせたくはない。
いや…。
もしかしたら、会わせない方がいいのかもしれない。
苦しめたくもないから。
星南が、塞ぎ込んでしまうくらいなら無理に会う必要はないのかもしれない。
それが、ただの悪戯であれば…。
だけど…。
その一言で、片付けてはいけない気がして。
ただ、どうしても話さなければいけないことが心の中に引っかかったまま。
あんなに切羽詰ったような声で、声からでも伝わる辛い心境で話した声の調子。
そんな声を聞いてしまったからこそ、放っておいてもいい事とは思えなかった。
きっと、星南が知らなければいけないことのような気がするから。
だけど、今の星南に向き合わせることは酷だよな。
ただでさえ、こんなに動揺したんだから。
星南の中で、母親の記憶や兄の記憶は辛い過去でもあって、その記憶や過去があるから今星南はこんなに苦しんでいる。
吹っ切ることができていないからこそ、話を出されることが辛いんだろうな。
今は、星南に時間を取った方がいいよな。
「星南。無理に、向き合えとは言わない。
だけど、少しだけ考えてみてほしい。
星南。
俺は、いつも星南のそばにいる。
ずっと一緒に、寄り添っていくから。
星南の心にも、星南の過去にも。
だから、どんな決断をしたとしても俺は星南から離れることは無い。」
この先どんな事があったとしても。
この手で、星南を守ってみせる。
本当は、知っておかなければいけないと思うんだ。
この先もずっと、一緒にいたいと思う人だから。

