「星南…。そろそろ起きろ。」
「ん…湊?」
眩しい日差しが、私の顔を包み込むようにカーテンの隙間から入り込んでいた。
朝を迎えたことを確認したけど、まだ重い瞼を再び閉じる。
「ったく…。ほら、星南ちゃん。起きないとここで襲っちゃうよ。」
その言葉と一緒に、湊から唇にキスを落とされ、優しく心地の良い温かさを感じる。
寝起きのせいか、たまらなく気持ちが良くてもっと湊を求めるように、湊の背中へ腕を回していた。
「…星南…。悪い。」
湊は、そう言って私から身体を離した。
「…軽く起こすつもりだったんだ。」
息が上がっている私を見て、湊は慌てていた。
「星南?
もしかして…」
何かを察したかのように、湊の目の色が変わった気がした。
「もしかして、もっと俺が欲しかった?」
湊に図星をつかれ、心臓の鼓動が一気に加速しうるさいほどに音を立てていた。
「そ!そんなわけないでしょ!
帰るんだから、早く準備しないと!」
「星南、こっち向けよ。」
湊は、私の腰に手を回しグイッと引き寄せられ再び唇を塞がれていた。
次第に熱くなる体温と、完全にスイッチの入った湊に何も抵抗することが出来ず、湊に体をあずけていた。
だから…
上手すぎるんだよ…
意識を手放さないように、声を抑えることに必死だった。
「ね…ねぇ、湊。さ…さすがに…」
「星南、帰ったら覚えておけよ?
悪いけど、今夜は寝かせないから。」
「…ありえないから。本当…」
病み上がりの人間に、どうしてここまでできるわけ?
「そう言いながら、途中から星南もちょっと本気だったじゃん。」
「…そ、そんなことない。」
言い訳をしようと考えたけど、何も出て来なかった。
「そんなことより、私もう帰れる?」
「帰れるよ。点滴も抜いてあるだろう?」
気づいたら、腕に刺されていた点滴は抜かれていて小さい絆創膏が貼ってあった。
「気づかなかった…」
「ぐっすり眠っていたからな。点滴、痛かっただろう?」
「痛くないよ、このくらい。」
針を刺されるくらいの痛みなんてどうってことない。
痛みに対しては、きっと誰よりも強い自信がある。
まあ、そんなこと自慢になんてならないけど。
「そうか。頑張ったな星南。」
そう言い、湊は優しく抱き寄せてくれた。
「失礼します。白木先生、明日海さんの退院のお会計が出来ました。」
「ああ。ありがとう。
じゃあ、星南。
帰ろうか。」
頷く間もなく、私は湊に肩を引き寄せられ一緒に病院をあとにした。
「星南、酔い止めの薬はちゃんと飲んだか?」
「えっ?どうしてそれを…」
湊と一緒に、何か乗り物へ一緒に乗ったことなんてなかったはず。
私自身も、湊には話していないのに。
「どうして、そんなこと知ってるの?」
「だって星南。車椅子に乗ったら気持悪いって言ってただろう?
だからその時、乗り物に酔いやすいタイプなのかなって思ってさ。」
「医者の観察力って本当すごいね。」
よく見てるというか、1つ1つの表情や仕草で私の気持ちを読み取ろうとする湊は素直にすごいと思う。
唯一の尊敬するところかもしれない。

