「しない」



逃げない。


教室では浮いていても

部活はすごく楽しいし

それに……



「あ」



教室に向かうと珍しく一斗の姿があった。


この時間からちゃんと席についてるとこ初めて見たよ。


寝てるけど。


一斗の横を通りすぎようとして、突然腕をつかまれる。


えっ。なに!?


「ハチミツ」


机に顔を伏せたまま一斗がつぶやく。


「……よく、わかったね?」


今日は鞄にクッキーを入れてきていた。


鼻よすぎでは?


有能な警察犬みたい、と言ったら怒らせてしまうかな。


「こっちがリクエストのハチミツクッキーだよ」


渡せてよかった。

来ない可能性も考えていたから。