棗ちゃんはステキな恋がしたい



帰りの車で思い出すのは、もちろん、一斗のこと。



わたし、一斗に振り回されてる気がする。

あんなのドキドキしない方が無理だよ!



「ねえ、坂田」

「はい」

「最近は……止めに来ないけど」



一斗との距離が以前にも増して近いこと、注意したりしないよね。



「どうして?」

「妨害した方がいいですか」

「……それは」 



邪魔されたくないけどさ。

邪魔されないと、どんどん――



「自分が強引に二人を引き離すことは可能ですよ。しかし逆効果になるかと」

「逆効果……って?」

「禁断の恋――スリルというスパイスが効いて恋を燃え上がらせてしまうのです」



なにいってるの坂田。



「止めたくても止められない。それが恋心でしょう?」

「……まあ」

「でしたら。自分はお嬢が彼が一線をこえぬ範囲で恋愛ごっこしている模様を眺めておきましょう」