「なんだそれ。それじゃあマジで許婚なのかよアレが」 「今は……」 「聞いてねーぞ」 「わたしも、つい最近知ったの! もちろんパパに取り消してもらうつもり!」 「ふーん?」 一斗、怒ってる……! 「わたし、ちゃんと好きな人と結婚したいもん!」 「俺と?」 「っ」 「“ちゃんと好きな人”なら――目の前にいるだろ」 「……っ」 「さっさと認めろよ」 無理。 好きって口に出したら、引き返せない。 「許婚ねえ」