許婚――それは 「誰、それ……」 「わかりません」 「坂田が知らない人なの?」 「はい。お嬢にそのようなお相手がいらっしゃったのを今朝知らされましたから」 「ウソでしょ」 「お嬢が幼い頃。親父さんが親友の息子とお嬢の将来を約束したんだそうです」 「聞いてない!」 わたしの意志とは無関係に決められた結婚相手のこと。 「会いたくないよ、坂田」 「いいじゃないですか。会うくらい」 「なにを話せばいいの?」 「まずはお召し物を」 「……へ」