棗ちゃんはステキな恋がしたい



「クソ暑いな」

「一斗が静かにしててくれないから」



静かな館内に居づらくなり、外に出てきた。



「デカい声出したのはナツメだ」

「一斗がイジワル言うからでしょ」

「なあ。お前なんか隠してるだろ」

「……なにか……って」

「話してみろよ」



正直に話せば、こんな風に、トモダチとして会うこともできなくなるかもしれない。



「俺みたいなヤツとは付き合うなって執事に反対でもされたか」

「ちがう」

「まあ俺。素行わりーもんな」

「坂田はね。ちゃんと、知ってるよ。一斗は悪い人じゃない……って」

「もし俺がナツメと釣り合うような立派な人間になれりゃ。認められるか」

「……え?」

「これから毎日学校にクソ真面目に通って。いい大学でて。社会的評価の高い職につきゃ、ナツメの隣にいられんのかな」



一斗……?



「敷かれたレールの上だけは歩きたくなかったが。お前手に入れられるなら不本意ながら進むのも悪くねーな」