「……んだよ。チェスのハナシかよ」 一斗が、小声でつぶやく。 「なに?」 「なんでもねーよ。行くぞ」 一斗に手首をつかまれる。 「待って、一斗」 「待たねえ」 一斗が、ぐいぐい歩いていく。 はやいよ。 「もっとゆっくり歩いてよ~」 「危機管理能力皆無だな」 「そんなことないよ?」 「どの口が言いやがる」 部屋をでるとき、 「ふーん。……そいつには触れさせるんだ」 銀髪さんの言葉も 刺さるような視線にも わたしは、少しも気づかなかったんだ。