――次の日、私は朝早く起きて、お兄ちゃんの所へ向かうため、荷物の準備をしていた。
 すると、ママがこんなことを言ってきたんだ。

「えーーっ! 1ヶ月も東京へ行くの!?」
「うん、だって、お兄ちゃんが来てって言ったんだもん」

「若菜、夏休みの宿題とか、学校の出校日とかもあるでしょ!?」
「それは大丈夫。お兄ちゃんが宿題見てくれるって言ったから。あと、学校も出校日はこっちへ帰ってきてちゃんと行くから心配しないで、ママ」

「でも、どこに泊まるの!?」
「お兄ちゃんのアパートだよ」
「一緒にアパートに泊まるの?」
「そうだよ」

 お母さんは、目を大きくしてビックリしている様子。

「そうだよって、アパート狭いでしょ? ふとんとか用意してあるの?」
「そんなの大丈夫だよ。もしおふとんなかったら、お兄ちゃんと一緒に寝てもいいし」

 私はキャリーケースに荷物を詰め込みながらそう言う。
 すると、ママは慌てた様子で、キッチンから私の側まで来て私にこう言った。

「い、一緒に寝るって……、若菜も、もう中学生なんだから、昔みたいに一緒に寝るのは……」
「どうして? 私たち兄妹だよ」

「兄妹って言っても、あなたたちは……」

 ママは一瞬、言葉を詰まらせた。
 だから、私はママにこう言って、キャリーケースに鍵をかけて、玄関の方へと向かう。

「もう行くって、お兄ちゃんにも言ったから、もう行くね。新幹線の時間に間に合わないから。じゃあ、行ってきま~す!」
「あっ、わ、若菜……。もう、あの子ったら……」

 ママの反対を押し切って、玄関の扉を開け、お兄ちゃんの住む東京へ向かう。

 お兄ちゃんと会えるこのチャンスを逃したくない。
 このチャンスを逃したら、またいつ会えるか分からなかったから。

 もう、夜、一人で泣きたくないの。

 だから、どうしても、お兄ちゃんに会いたかったんだ……。