「へー、そうなんだ。それくらい別に全然いいけど。」
あくまで余裕のある彼氏を演じる。
そこで、椿がやっと帰ってきた。
「さっきね、私たちのっポイの作ってるの、見えた! 多分、あとちょっとで来る。」
「どっからのぞいたんだよ。お前毎回それやるよな。」
「えー、だって気になるじゃん? 早く食べたいなー、まだかなーって。」
椿の昔からの癖だ。こういうのは多分俺しか知らない。田中日奈や空青も知らないと思う。
いっつも必ず厨房をのぞいてくるんだ。どうやっているのかはいまだに知らない。
「そういえば、前もやってたかもね。」
いきなりそんなことを言ってきた一条。
は? なんでお前が知ってんだよ。
これは俺しか知らないと思ってたのに。
「あ、一条くんにも気づかれてた?」
アハハじゃないんだよ。
「僕もちょっと見てきてみようかな?」
、、、また一人称僕に戻ってる。こいつは、裏表を使い分けているのか。普通に怖いんだけど。多分今日で三回目だぞ、この感情を一条に感じたのは。



