私の好きな人、というのは一条 颯(いちじょう はやて)のことで、彼もなかなか、いや、かなりのイケメンである。一条とは、一緒に実行委員をやったことがあり、そこで仲良くなって、一年前の修学旅行で同じ班になった。

好きになったタイミングは、実行委員の時。すごく頼りになったし、会話も弾んだ。でも私は何よりも、一条のクシャッと笑った顔が好きだった。

どこかの誰かさんと違って、気はきくし、みんなに優しいから女子友だちも男子友達も多い。

それゆえに、私は一条に告白していない。一条もすごくモテていて、一条のことを好きな女子は多い。これで振られたら、気まずいし。

それで、これがバレたら絶対海飛にからかわれる。これだけは間違いないから、一条との2ショを隠そうとしているわけです。


「ふぅー、あったあった。」


ないはずないのに、やたら安心感があった。少し悩んで、私は引き出しの中にしまった。
海飛をこの部屋に入れるつもりはないので、絶対に引き出しを覗かれることもない。じゃあ、隠す必要ないじゃんと思った?でも部屋にまで入らなくても、ドアを開けられて中を見られたら、、、と思うとしまっておこうってなるわけですよ。備えあれば憂しなし、っていうもんね。


「ごめん、もういいよ。」


階段を下って、玄関まで戻ってきた私は海飛に言った。


「4分32秒。まぁ、よしとしてやる。」


海飛がすました顔で、腕時計を見ながらそう言った。