また君と恋する

「いいよ、ちょっと待ってて」

と言って取りに行く広田に申し訳なさを感じる。

英語の教科書を忘れたと言ったのは嘘で、ただの口実。

教室には入らず、ドア付近から中を覗いた。

……思い出せないだけで、見ればこの子だって分かるはず。

とその時。

「由麻ー!」

そう呼ぶ声がした。

それに対して、

「なにー?」

と答える声は……俺のすぐ横からした。

驚いて隣を見ると、ちょうど教室へ入ろうとする女子がいて。

目が合った。

……あ、この子が葉石 由麻。

目を逸らすわけでもなく、声をかけるわけでもなく、少し笑って会釈する葉石。