パンッ!

ある夏の日。

まだまだ暑さが留まるところを知らない、そんな日に。

それはそれはもう盛大なビンタ音が響いた。

一瞬、何が起こったか分からなくて思考が停止する。

と次の瞬間には、「ぎゃーっ!」と泣き叫ぶ声が耳を劈いた。

すぐに親達が駆け寄る。

どうやら遥海君が広海君からおもちゃを取って喧嘩して、広海君が遥海君を叩いたみたい。

冬鳴兄弟の喧嘩は何度か見たことがあったけど、実際に手を上げるのは初めてだった。

お母さん達が宥めて、その場は収まった。

まあ、子供ならよくある喧嘩。

驚きはしたけど、すぐに平常に戻る。

だけど、意外にも呆気に取られていたのは志希だった。