また君と恋する

志希の顔が近づいてくる。

ドキッと胸が高鳴って、それでも不思議と心は落ち着いていた。

自然に身を任せるように。

目を閉じて。


唇が触れるのを感じた。


刹那にも悠久にも思えたその時間は穏やかだった。

バクバクと鼓動が鳴っているのに、幸せな時間ってこんなに静かなんだなって思うほどに。

どちらからともなく唇が離れて、私達は、照れを隠すように微笑み合った。


「志希」

「ん?」

「私にとって志希は彼氏だから。憧れるだけの王子様じゃなくて、同じ歩幅で一緒に歩いていきたい彼氏、だから」

「……うん。そっか」

ベンチに置いていた私の帽子を手に取った志希は、それを私に深く被せた。

つばを上げると、もう志希はいなくなっていた。

だけど、最後、心なしか言葉が弾んでいるようにも思えた。