「見、ないで……。恥ずかしい……」

透也を見ながら涙目で訴えると、私の胸元に顔を埋めていた一貴さんが視線をあげる。


「暖乃。電気、消そっか」

ふっ、と艶っぽく唇を歪めた一貴さんが、ベッド横のサイドテーブルに置かれたリモコンで照明を落とす。

部屋が暗くなると、そばで私を睨むように見ていた透也の姿が見えなくなった。

どこかへ移動してくれた……? 


「暖乃、こっち向いて」

顔を横に向けていると、一貴さんが真上から呼びかけてくる。

顔を動かすと、暗がりの中で妖しく微笑んだ一貴さんに唇を塞がれた。

暗くなった部屋に、くちゅりとキスの音が響く。

私は照明の落ちた天井をぼんやりと見上げながら、頭の隅で透也のことを考えていた。

一貴さんの舌が熱っぽく絡み付いてきても、姿の見えなくなった透也のことが気になってキスに集中できない。

こんなの、ダメだ。一貴さんとの現実を選ぶと決めたのに、私は結局、透也への執着を捨てきれていない。