『ここで寝なかったら、どこで寝ればいいんだよ』
「ここ、いちおう私たちのベッドだから。透也は向こうのお客さん用の部屋を使えばどうかな?」
『でも、ずっと暖乃のそばで寝てたじゃん』
「そう、だけど……」
『おれがいたら、千堂と堂々といちゃつけないから?』
「そういうわけじゃないけど……」
ジトッとした目で見上げてくる透也に痛いところを突かれて口籠る。
敢えてそんなふうに訊ねてくるということは、透也だって本当は、新居に引っ越してきてから私が居心地の悪さを感じていることに気付いているのだろう。
それがわかっていて居座り続けているのだとしたら、透也は意地悪だ。
「透也、本当に、いつ帰るつもりなの?」
少し腹がたったのもあって冷たい口調で問いかけると、透也が『だから、そのうち帰るって』と適当に返してくる。
一度口にした約束を守らない透也の態度に、私はさらに腹が立った。
「そのうち、そのうちって。いつもそればっかじゃん」
私が声を荒げると、透也は驚いたように瞬きをして身体を起こした。



