寝室に消えたと思っていたのに、いつのまに出てきていたんだろう。どこから見られてた……?
透也がまた一貴さんのなかに入ってしまったら、どうしよう。
食器を洗う手を止めてブンブンと首を左右に振っていると、それに気付いた一貴さんが不思議そうに首を傾げた。
「どうしたの?」
濡れた手を拭いて私に触ろうとする一貴さんのことを、透也がギラギラと睨んでいる。
「あ、えっと……。なんか肩凝ってるなーって」
透也を気にしながら笑って誤魔化そうとすると、一貴さんも「あー、わかる」と軽く肩を回した。
「お風呂から上がったら、マッサージしてあげる」
「ありがとうございます」
何も知らずに私の肩にぽんっと触れる一貴さんから、さりげなく離れて身体をずらす。でも、あからさまに一貴さんを避けたりできない。
だからと言って、透也を強制的に追い出すこともできない。
透也との再会も、一貴さんとの結婚も、どちらも私にとっては嬉しくて幸せな出来事だったはずなのに。
板挟み状態のこの居心地の悪さを、どうすればいいんだろう。



