君と二度目のお別れをします。


透也に消えてほしいわけじゃないけれど、一貴さんと暮らし始めた家に透也がいることに若干の居心地の悪さはある。

何も知らない一貴さんが、恋人の感覚で私に触れたりキスしたりすると、透也が今にも取り憑きそうな目で私たちを睨んでくるからだ。 

嫉妬すると一貴さんのなかに入れると言っていた透也だけど、新居に引っ越してきてからはまだ一度も一貴さんに取り憑いていない。

だけど過去2回は、一貴さんが私にキスしているときに中身が透也に変わっていた。

一貴さんに抱きしめられたり、キスされたときは要注意だ。

一貴さんの胸を軽く押し返しながら、念のために周囲に視線を巡らせる。

左右にも背後にも透也の気配がないことを確かめると、私は一貴さんに微笑みかけた。


「ごはんの用意、できてます」

「ありがとう。帰ってきてすぐに暖乃の作ったごはんが食べられるなんて、すごく幸せ」

一貴さんに抱き寄せられて、またキスされる。

一貴さんの優しい言葉やキスが心をときめかせるけれど、私は一貴さんとの新生活の甘さに完全に浸ることはできなかった。

一貴さんが私に甘い言葉をかけてくれても、透也が部屋にいると思うと一歩身を引いてしまう。それが一貴さんに対して少し申し訳なかった。