君と二度目のお別れをします。


『どうした、急に。あのお姉さんに、完全に不審者扱いされてたじゃん』

去って行くお姉さんの背中を振り向きながら、透也が私のことをからかってくる。

透也はけらけら笑ってくるし、さっきのお姉さんに変な客だと思われたかもしれないけど、そんなことは別にどうだってよかった。

だって、今日の私は透也とデートに来てるのだ。たとえ他人の目に視えなくても、触れなくても、透也はちゃんと私の目の前に座ってる。


「うるさいなー。せっかく透也とカフェに来てるのに、飲み物ひとり分じゃ淋しいでしょ。私だって、透也とデートしてる気分をもっと味わいたいなって思ったの」

バカみたいだってからかわれるのを覚悟して、透也からツンと顔をそらす。

だけど透也は私の言葉を聞いてもバカにしたりからかったりしなかった。

代わりに、頬杖をついた顔を横にそらして、何かを堪えるみたいに眉をしかめてどこかを睨んでいる。その横顔を見て、透也が今ちょっと泣きそうなんだって気が付いた。


「透也、私の言葉に感動して泣いてるでしょ」

『泣いてねーよ』

「絶対泣いてる」

『暖乃、しつこい』

横目にこっちを睨んでくる透也の素っ気ない言葉が照れ隠しだとわかるから、懐かしい愛おしさが胸に込み上げてきて、頬が緩むのを我慢できない。

私と付き合いだしてからの透也は、余裕ぶっているくせに案外感情がすぐに顔に出てわかりやすくて。そういうところが好きだった。