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映画を見終わったあと、私たちはふたりでよく行っていたカフェに入った。
「映画、全然見てなかったでしょ」
『あー、途中で内容飽きちゃった。面白かった?』
おひとり様でパスタを食べているようにしか見えない私の前で、私にしか見えない透也が頬杖をついて首を傾げる。
「まぁ、そうだね」
そう言う私も映画の後半は透也の寝顔ばかりを見ていたから、あまりはっきりとしたことは言えない。
『その反応、暖乃もあんまり見てなかったんだろ?』
フォークをパスタにくるくると巻き付けていると、透也が私の顔をじっと見ながら図星を付いてくる。
「み、見てたよ。原作に忠実に作られててよかった思う」
『ふーん』
焦って余計にくるくるとフォークを回していると、透也がククッとからかうように笑った。
「透也こそ、主演の子見るの楽しみにしてたくせに。寝ちゃってもったいない」
『確かにあの子は可愛いけど、絶対見なきゃいけないってもんでもないじゃん。おれが好きなのも興味あるのも、暖乃だけだし。暖乃がおれの視界に入ってればそれでいいよ』
本気なのかからかっているのか、透也が突然甘い言葉をぶち込んでくる。
返す言葉を失くして赤くなっていると、透也が悪戯っぽく口角を引き上げて笑う。こういう意地悪な顔をしているときの透也の言葉は、半分がからかいで残り半分は本心。
私以外に誰にも声が聞こえないからって、ひとりで座っているカフェの席で私を動揺させるようなことを言うのはずるい。
私はフォークに何重にも巻き付いたバスタを口の中に詰め込むと、にやけ顔の透也を見ないように必死で食べた。



