君と二度目のお別れをします。


「ここ1~2年で、ドラマとかCMとか出まくってる。すっかり人気の若手女優さんだよ」

『そうなんだ。おれ、死ぬ2~3年前から可愛いって思ってたよ。めっちゃ見る目あるな』

「あ、っそ」

生前の透也はテレビにその若手女優が映ると『可愛い』と言って食い付いていたけど、ユーレイになってもやっぱり『可愛い』って思うんだ。

主演の若手女優が透也に映画への興味を持たせたことに、ちょっと妬けた。

ふいっとそっぽ向いて、ドリンクホルダーに置いたアイスティーに手を伸ばす。無表情でストローを吸っていると、透也が横からぬっと顔を出してきた。


「わ、何!?」

咽かけてつい大きな声を出すと、前方の席の女の人が振り向く。

私の両隣が空席であるのを見た彼女が不審気に眉を寄せているから、すごく気まずかった。

周囲からしてみれば、今の私はひとりで映画鑑賞に来ている女性客なのだ。


『不審者扱いされたな』

透也が真っ赤な顔でドリンクホルダーにアイスティーを置く私を指さしてニヤニヤとする。


「透也が急に脅かすからでしょ」

『だって、暖乃が物言いたげな顔してたから。暖乃、おれが主演女優の子褒めるから嫉妬したんだろ』

「してないよ」

『いや、あれは妬いてる顔だった』

「違うって!」

透也にしつこく揶揄われて、また私の声のボリュームが上がる。

気付けば座席の肘置きまでドンッとたたいてしまっていて、振り向いた前方の席の女性に、今度は怯えた目で顔をそらされてしまった。