買い物を終えて時間を確認すると、チケット予約した映画の上演時間が近付いていた。
「そろそろ行こうか」
小声で話しかけると、透也が私の隣をふわふわと付いてくる。
飲み物だけ買って劇場に入ると、シートには空席が結構あった。
私がチケットを取った両隣の席も空いていて、透也が下げられない座席部分にふわっと座るイメージで腰かける。
『映画館、すげーひさしぶり』
ちゃんと椅子に座れるわけでもないし、ポップコーンが食べられるわけでもドリンクが飲めるわけでもないのに、透也はなんだか楽しそうだった。
『で、何の映画見るんだっけ?』
「小説が原作になってる恋愛映画だよ」
『おもしろいの?』
「原作は良かったよ。映画も、口コミでは結構評判」
『ふーん』
チケット代を払うのは私だから、映画は私の好みで選んだけれど。透也はきっと恋愛映画にはさほど興味がないに違いない。
「あ、でも。透也が好きだった女優さんが主演で出るよ」
『え、主演なんだ? すげーな、楽しみ』
3年前はドラマの脇役で出ていることが多かった女優の名前を告げると、映画に対する透也の興味がぐんと上がった。



