店内をふわふわ動き回っている透也を追いかけていると、ふとマネキンが着ているロング丈のスカートに目が留まった。
何気なく生地の感触なんかを確かめていると、透也が私のそばに近付いてくる。
『気になんの?』
「なんとなく見てただけ」
『待ってるから、試着してきてもいいよ。映画までまだ時間あるし』
透也に言われて、手にしたスカートに少し心が揺れる。
「よかったら、着てみてくださいね」
うだうだと迷っていたら、さりげなく近付いてきた店員のお姉さんにも試着を勧められてしまった。
「じゃぁ……」と、流されるように頷くと、お姉さんがニコニコしながら試着室まで案内してくれる。
「こちらにどうぞ。スカート、かけておきますね」
「ありがとうございます」
外からカーテンを閉めてくれようとする彼女に軽く頭を下げたとき、試着室の外でふわふわしていた透也が閉じかけのカーテンの隙間からするりと忍び込んできた。
「ちょ、どうして透也まで試着室に入ってくるのよ」
『いいじゃん、別に。おれに着替え見られたところで今さらだろ』
「そんな……、一応ここ試着室だよ?」
『店員にバレるわけじゃないんだし、気にすんなよ』
「それ、姿が見えなかったら女子風呂覗いてもいいじゃんっていうのと同じくらい外道な発想だよ」
試着室の鏡に映る透也をジトッと睨む。
だけど透也は私の言葉なんて気にせずに、にやにやと笑っていた。



