ユーレイになった元恋人とデートをするのは、婚約者への裏切りになるだろうか。

お互いに触れ合えないとはいえ、こんなふうに毎晩寝起きを共にしている時点でアウト……? 

ごちゃごちゃと考えているうちに、透也がどんどん離れていってしまう。

迷いに迷った結果、私はぎりぎりのところで誘惑に負けてしまった。


「透也、デートしようか」

寝室を出て行く直前の透也に声をかけると、彼が怪訝そうに振り向いた。

『いやなんじゃねーの?』

「いやではない。いやではないから、困ってた」

『何だそれ?』

好きだった人に誘われたデートなんだから。その人がユーレイだったとしても、嫌なわけがない。

泣きそうに顔を歪める私を見て、透也が呆れたように目を細めて笑う。

そんな笑い方ひとつに、ぎゅっと胸が締め付けられるから。だから、困ってる。

透也の些細な仕草や表情が私の心を揺らすんだから、透也と日常的にしていたようなデートを再現したら、私の気持ちなんて今よりもっとグラグラ揺れる。

それがわかるから、すごく怖い。