君と二度目のお別れをします。


「婚約破棄はしないよ」

『お前、まだあきらめねーのかよ』

「それはこっちのセリフなんだけど」

呆れ顔で言い返すと、透也がむっとして黙り込んだ。

不機嫌そうな透也の顔を見て私が吹き出すと、透也もつられて表情を崩す。

くだらないことを言っては笑い会える透也との空気は心地良くて。今まで透也がいなかったことが夢だったんじゃないかと思えるくらいに自然だ。


『ひさしぶりに、暖乃と買い物行ったり、映画見たりしたい』

「ユーレイなのに?」

『ユーレイだからだよ』

戯けて笑った私を、透也が真顔でじっと見てきた。

「ユーレイだから?」

『そう。おれはもっと、暖乃と一緒にあたりまえの日常を過ごすつもりだった。せっかく付いてこれたんだから、特別なやつじゃなくて日常的に暖乃としてたデートがしたい』

日常的にしてたデート……。透也が口にした言葉に、胸の奥がぎゅっとする。

緩くあがっていたはずの口角がじわじわと下がっていき、なんとも言えない気持ちになった。