透也に置いていかれたと思うと辛くて悲しくて、今すぐ透也のそばに行きたいと何度も思った。
でも透也が男の子を庇って命を落としたことを考えると、彼の後を追うという選択肢は選べなかった。
透也は他の誰かの命を救うために自分の命を失ったのに。もし私が淋しいという理由だけで後を追えば、透也は絶対に怒るし悲しむ。
頭の隅でそれだけは理解していたから、毎日何とか踏ん張った。
眠れない夜はベッドに寝転がって天井を眺めながら、夢でもいいから透也に会いたいと願った。
何とか透也の夢が見たくて、意識が混濁するまでお酒を大量摂取したこともある。それでも結局、透也の夢は見られなかった。
職場には透也が亡くなったあと1週間ほど休みをもらったけれど、それ以降は休まずに出勤した。
家にいたってどうせ眠れないから、朝一番に出勤をして夜遅くまでがむしゃらに仕事をした。
昼休みもろくに取らずにずっとデスクに座っている私に、上司や先輩は「無理しないでね。この頃顔色悪いよ」と毎日のように声をかけてきた。
後輩までもが気を遣って、私の分の仕事を手伝おうとしてくれた。
それでも私は作り笑いで「大丈夫です」と同僚たちの厚意を頑なに拒否し続けた。
何か没頭するものがあったほうが気が紛れた。パソコンに向かってひたすら作業をしていれば、透也のことを考えずに済んだから。



