「たった3年でおれのこと忘れるとか。薄情なやつ」

掠れた声でさらに私をなじったあと、おもむろに唇が重なる。

私を抱きしめる腕も、鼻先をくすぐる匂いも一貴さんのものだけれど、少し私に甘えるみたいに優しく唇を食むキスの仕方は透也のそれに違いなくて。懐かしさと切なさで、うまく呼吸ができない。

外見は一貴さんなのに、目を閉じてキスを受け止めていると、その姿形も透也であるように錯覚してしまう。

透也が言うように、私はきっと薄情なんだ。

悩みぬいてようやく結婚を決めた一貴さんに、あっさりと透也を投影してしまえるほどに。


ねぇ、透也。透也は「たった3年だ」って言うけど、「たった」なんかじゃなかったよ。

透也がいなくなったあとの3年間は、長くて辛くて苦しかった。

私がどれだけ透也のことを本気で好きだったか。

どれだけ諦められずにいたか、透也はちゃんとわかってる――?

透也のことを忘れたりしない。忘れるはずがない。

透也への想いは残したままだけど、私も前に進んでみようと決めたんだ。それなのに――。

今頃現れて、こんなのずるい。

一貴さんの広い背中に腕を回すと、私はその中にいる透也ごと彼のことを抱きしめた。