「おれがいるのがわかってて千堂とキスするとか。お前、いつからそんな小悪魔になったの?」

「とー、や。いたの?」

「いたのじゃねーし。暖乃が千堂とふたりでいるとこなんて見たくないって思うけど、ふたりっきりにさせるのも気になるじゃん。戻ってきたら、案の定いちゃついてるし」

「だ、って……」

私は今は一貴さんの婚約者だし。口には出さずに途中で言葉を飲み込むと、透也がふっと息を吐いた。


「目の前でキスしてるとこなんて見せつけられたら、ムカつくだろ。だけど、おれがこいつの中に入れたのはたぶん、暖乃とキスしてるとこ見て嫉妬したからだ」

「へ?」

「死んでなけりゃ、暖乃の全部が今頃おれのものだったのに。千堂が暖乃に触れる手が、唇が全部おれと成り代わればいいのにって、嫉妬の念を送ってるうちに、こいつの中に入ってた。思えば、初めに入れた時もそうだったわ」

「え、嫉妬……?」

透也は嫉妬で一貴さんに憑りついたってこと――――? 

顔をあげると、一貴さんの中にいる透也が私の左手をつかんだ。その薬指に細いシルバーリングが光るのを見つけた彼が、眉間を寄せて苦笑いする。