ぎゅっと目を閉じると、耳の横から差し入れられた一貴さんの手が私の頭の後ろに移動した。

その手に乱暴に引き寄せられたかと思うと、角度をずらして噛みついてきた一貴さんのキスが一気に深くなる。

口内を荒っぽく雑に搔きまわされて、胸に燻っていた蟠りやもやもやした思考が全て吹き飛んで頭の中が空っぽになる。

気付けば、ただキスの温度だけしか感じられなくなっていて。頭も身体もふわふわとして、座っているのに腰から力が抜けそうだった。

指先に何とか残った力で一貴さんのシャツの胸元にしがみつくと、執拗なくらいに繰り返されていたキスが止まって、ぎゅっと抱きしめられた。


「なんかわかったかも。こいつの中に入れる条件」

顔を押し付けられたシャツからは、いつの間にか馴染んでしまった一貴さんの香りが漂ってくる。

声のトーンだって、さっきまで聞いていた一貴さんのものと変わらない。

だけど耳元で声が聞こえた瞬間に、今私を抱きしめているのが透也だとすぐにわかった。

だとしたら、何も考えられなくなるほどのキスを浴びせてきたのも透也――――? 

唇にそっと触れると、そこが腫れぼったく熱いような気がして、途端に心音が速くなる。

ドキドキしながら顔を隠していると、背中に回された腕が私のことをいっそう強く抱きしめてきた。