「一貴さん……?」

「暖乃が可愛いこと言ってくれたから、つい。引き止めたいって思ってくれたなんて、嬉しいよ」

一貴さんが嬉しそうに微笑んで、私の頬を指先ですーっと撫であげた。

熱を孕んだ一貴さんの眼差しが、私を好きだと訴えてくる。

つい引き止めてしまったのは、透也のことを話せない心苦しさからなのに。嬉しそうにされてしまうと、なおいっそう心苦しい。

困って視線を横にそらすと、頬に触れていた一貴さんの指が私の顎を持ち上げた。

一貴さんの唇が、今度はゆっくりと私の唇に重なる。

あたりまえだけど一貴さんの唇はちゃんと熱を帯びていて、それが感覚すらなかった透也とのキスを思い起こさせた。

今触れているのは一貴さんなのに。脳内に何度も透也の残像がちらつく。

今は透也のことは考えないようにしないと。考えるのは、一貴さんのことだけ。