君と二度目のお別れをします。


「透也……」

何も答えてくれない透也の背中に呼びかけたとき、秘書室の入り口から顔を覗かせた一貴さんの顔が、透也の身体の向こうに透けて見えた。


「あれ、暖乃、ひとり? 今、誰かと喋ってなかった?」

一貴さんが、秘書室をきょろきょろと見回す。

不思議そうに首を傾げている一貴さんには、やっぱり透也の姿は見えていないらしい。

外からやってきた一貴さんには、私がひとりで話している声が聞こえていたのだろう。

結構際どい話をしていたから、もし一貴さんに話の内容まで聞かれていたとしたら、まずい。

「あ、もしかして電話対応してくれてたのかな?」

血の気が引く思いがしたけれど、にこにこ笑いながら訊ねてくる一貴さんが私を怪しんでいる様子はない。


「あ、はい。そうです。でも一貴さん宛ではなかったので、他の方に……」

「そっか。定時過ぎたのに、遅くまでありがとう」

震える声で誤魔化した私の言葉を、一貴さんは少しも疑っていないらしい。笑顔でお礼を言うと、私のデスクに歩み寄ってきた。