君と二度目のお別れをします。


「透也はいつまで私のそばにいるつもりなの?」

『なんでそんなこと聞いてくんの?』

ふっと胸に不安が過って訊ねると、透也が怪訝そうに顔をしかめた。

「特に深い意味はないんだけど……。いつまでこんなふうに透也のことが視えたり話したりできるのかなって思って」

『さぁ? おれの姿が暖乃に見えてる限りは、お前のそばを離れるつもりはないけど?』

「でも私、数ヶ月後には一貴さんと結婚して一緒に暮らし始めるよ?」

『まだ千堂と結婚する気でいんのかよ。あいつとの婚約は破棄しろって言っただろ』

「そんな簡単に言わないでよ。お互いの親に挨拶も済んでるし、一貴さんはSENDOソリューションズの副社長なんだよ? 私と一貴さんの婚約は数カ月前から社内でも周知されてるし、突然理由もなく婚約破棄なんてできないよ」

『……』

もし今目の前にいる透也に実体があれば。彼が事故で亡くなったのなんて嘘で、本当は生きていたんだっていう奇跡でも起これば。

私は一貴さんと彼のご両親に土下座して謝って、一貴さんとの婚約破棄を選択してしまうかもしれない。 

でも、現実はそうじゃない。

透也のユーレイが現れたから一貴さんとの婚約はやめます、なんて。そんな話、通用するわけがない。