『なんか、なつかしーな。おれらが親しくなったキッカケって、おれが新入社員だった暖乃の資料作り手伝ったからだよな。覚えてる?』
そんなところへ、透也が私が思いだしていたのと全く同じ思い出を語るから、涙が出そうになる。
「覚えてるよ。手伝ってもらったお礼をしたいから、ってむりやり透也の連絡先を聞いたとき、私の頭のなかは『この先輩となんとかしてもっと仲良くなりたい』って下心でいっぱいだった」
私を手伝ってくれたあと営業部に帰って行こうとする透也を走って追いかけて「お礼をしたい」と言うと、彼は快く連絡先を教えてくれた。
透也とうまく連絡先交換ができた私は、表向きには律儀な後輩の顔を装いながら、心のなかでニヤついていた。透也との繋がりを一度きりで終わらせたくなかったから。
今まで話したことのなかった私のズルさを打ち明けると、透也が気の強そうな猫目を僅かに見開いて、すぐにくしゃりと表情を崩した。
『そうなんだ。じゃぁ、おれと一緒だな』
「一緒?」
『おれが困ってた暖乃に声かけたのだって、半分は下心。パソコンの前で泣きそうになってる新入社員の女の子が可愛いなーって思ったから』
「そ、なんだ」
だとしたら、私たちがお互いに惹かれたタイミングは同じだったんだ。



