君と二度目のお別れをします。


「暇だったら、またどっか行ってきていいよ」

あんまりそばでじろじろ見られてたら集中できないし。

『いや、……』

振り向きもせずに作業を続けていたら、透也が横からすっと手を出してきた。

『暖乃が作ってるデータでも悪くないけどさ、どうせ作り直すなら、こっちのグラフ使ったほうが見やすいと思う。あと、数値もこっち使ったほうがわかりやすいかも』

「え、そうかな」

『ん、とりあえずやってみな』

「うん……」

そういえば、透也は営業資料や会議用の資料を作るのがうまかった。

入社してすぐに総務部に配属された私と営業部の透也が親しくなったのも、残業で資料作りをしていたときに助けてもらったことがキッカケだった。

まだ新入社員だった私は資料作りにも慣れなくて。

別の用事で総務に顔を出していた透也が、文字通り私の手をとって、わかりやすいデータの作り方を教えてくれたのだ。

ふたつ上の先輩で、営業部でも成績を順調にあげていっているところだった透也は、とても頼もしかった。

耳元で響く掠れた低い声とか、マウスを持つ手の上から軽く触れた骨張った手の指の感触とか、後ろで少し動くたびにふわりと漂ってくる爽やかな甘い匂いとか。透也の全部に全身でときめいた。