『ていうか、さっき暖乃に資料渡しに来たのって竹下だよな。この3年間で社長秘書になってるなんて、すげぇな』
「竹下さんも透也の同期だよね?」
『そうそう。あいつ、3年前は営業部の内田と付き合ってたけど、もう結婚してる?』
笑顔の透也に訊ねられて、返答を躊躇う。
職場ではプライベートを全く見せない竹下さんが、社内の営業部の人と付き合っていたことなんて知らなかった。それも、結婚を視野に付き合ってたなんて。
「営業部の内田さんは、1年くらい前に社外の人と結婚したよ」
『え、マジか。あいつら、別れたの? 付き合い長かったのになー』
透也が残念そうにつぶやくのを聞きながら、こんなカタチで竹下さんのプライベートを知ってしまってよかったのだろうか……と、少し申し訳ない気持ちになる。
無言で資料に視線を戻してミスの修正に取りかかろうとしていると、透也がふわりと浮かんで横からパソコンの画面を覗き込んできた。
『あれ、定時近いのに今から新しい仕事始めんの?』
「うん、私が纏めた会議資料のデータにミスがあって。明日までに修正しないといけないの」
『ふーん』
宙に頬杖をついた透也が、私のそばで生返事を返してくる。



