『やっぱり、千堂の家に行くか、あいつに来てもらえばよかったな』

手のひらをぎゅっと握りしめた透也が、悔しげにつぶやく。

「どうして?」

『さっきみたいに千堂の体に入れたら、暖乃に触れるじゃん。今すごく、暖乃のこと抱きしめて、めちゃくちゃにキスしたい気分』

透也が切なげ目で私をじっと見つめる。

『暖乃を残して死ぬとか、何やってんだろーな、おれ』

苦く笑った透也が私に顔を近付けて唇を合わせてくる。

けれど重なったはずの唇に感じるのは、僅かな空気の揺れだけで。大好きだった透也の匂いや熱が、哀しいくらいに感じられなかった。