「そのときのことはどうだか知らないけど、一貴さんと親しくなったのは透也がいなくなってからだよ。透也が営業部の部下だったこともあるのかな。透也がいなくなってから落ち込んで仕事が休みがちになっていた私をすごく気遣ってくれたの」
私が一貴さんをフォローするようなことを言うと、透也が不機嫌そうに片眉をきゅっと下げた。
『それって、お前が弱ってるとこに付け込まれただけなんじゃねーの。仕事だってお前、今は副社長秘書やってんだろ? 私欲で秘書課に移動させるとか、下心見え見えだろーが。お前、ちょろすぎ』
ちょっと一貴さんをフォローしただけなのに、一方的に私を責めてくる透也に腹が立ったし傷ついた。
私だって、一貴さんとの交際や結婚を簡単に受け入れたわけじゃない。
透也がいなくなってから、いっぱい悩んで苦しんで。その結果、選んだ道なのに。
「今頃になって出てきた透也に、そんなふうに言われる筋合いない!」
腰を浮かせて、バンッと思いきりテーブルをたたいたら、透也が驚いたように目を瞬いた。



