心配になって眉を寄せていると、透也が私の顔を見て鼻先でふっと笑った。
『さぁ? 成仏とかそういうのはよくわかんねーな。気付いたときにはこんなふうにふわふわして実体なくなってたし。いつもは狭い部屋で寝てるばっかりで時間の感覚もよくわかんないんだけど、命日とかお盆とか。あとは誰かがおれに会いに来たときは、なぜか実家の仏壇経由で帰って来れる』
「帰って来れる、って……。そんな簡単に行き来自由なの?」
『知らん。できるから、そうなんじゃない?』
透也の言葉に啞然とする。
「じゃぁ、私が透也の実家に会いに行ってたときも毎回帰って来てたの?」
『あー、うん。暖乃がおれに手を合わせに来るたびに近くにはいたよ。最初は死んでるってことがよくわからなくて。おれの写真見て泣いてる暖乃に触れなくて歯がゆかったんだけど。ちょっとずつ、あー、おれもう死んでんだって実感が沸くようになってきて。それからは、暖乃が実家に会いに来てくれるのを楽しみに待ってた』
「そう、なんだ」
透也がやんちゃっぽく見える猫目を軽く細める。
ひさしぶりに見る透也の笑顔にきゅんと胸が鳴ると同時に、透也がいなくなってからずっと溜まったままでいたやるせない気持ちが込み上げてきた。



