君と二度目のお別れをします。


「大丈夫? もし疲れてるなら、今日はうちに泊まりに来る?」

一貴さんがハンドルから片手を離して私の頭をそっと撫でてくる。

普段ならすぐに頷いてしまうところだったけれど、そばにいる透也が今にも憑りつきそうな瞳で一貴さんを睨んでいて、今夜はその誘いを受けられそうにない。

「いえ、大丈夫です」

「本当に? もし体調が悪いなら、俺が暖乃の家に行ってもいいけど」

一貴さんがそう言うと、今度は透也が私のことを牽制するようにじっと睨んできた。

この調子では、一貴さんが私の家に来たとしても落ち着かないだろう。

それに今夜は、どうしてこんな事態が起きているのか、透也とふたりで話したい。

「いえ。今日はひとりで大丈夫です」

「そう?」

私が笑って首を横に振ったとき、信号が青に変わる。

私の頭から手を離した一貴さんは少し残念そうだったけれど、一貴さんは突然現れた誰かさんのように私に無理強いしたりはしない。

「新居の契約が決まったら、すぐに連絡するね」

自宅マンションの前まで私を送ってくれた一貴さんは、別れ際にそっと私にキスして帰って行った。