君と二度目のお別れをします。




「この部屋、リビングの窓からの眺めが最高だね」

タワーマンションの30階の部屋の窓から夜景を眺めていると、不動産屋の担当者と話をしていた一貴さんが私の隣に立った。

「暖乃の印象はどう? 事前に見た間取りや写真のイメージに近かった?」

「そうですね。写真で見た印象よりも部屋が広々としていてびっくりしました。カウンターキッチンも素敵だし」

振り向きながら一貴さんに笑いかけようとしたとき、窓ガラスに映る透也が視えた。

不機嫌な顔で腕組みをした透也は私――、ではなく、隣に立つ一貴さんのことを今にも取り憑きそうな()で睨んでいる。

「キッチン、素敵だよね。暖乃がそこに立って料理するところを想像するだけで、お腹が空いてきちゃったよ」

一貴さんが、にこにこしながら私の肩に手をのせる。

それを見た透也が噛み付かんばかりに飛んできて、一貴さんの手を払い除けようとしているけど……。

実体のない透也の手は私の肩の辺りをあっちに行ったりこっちに行ったりしているだけで、一貴さんへのダメージはゼロだ。

その様子を呆れ顔で見つめていると、私の視線に気付いた透也がクレームをつけてきた。