君と二度目のお別れをします。


目を白黒させる私を、一貴さんに憑いているらしい透也がジトッとした目で睨んでくる。


「人のこと散々無視して、千堂なんかにべたべた触らせやがって」

そう言いながら私の頬に手のひらをあてる男は、話し方が透也なくせに見た目が一貴さんなものだから、チグハグであまり説得力がない。

思わずふっと笑うと、一貴さんの片眉がきゅっと下がる。不機嫌そうな顔をしているのは一貴さんなのに、私にはそれがちゃんと透也に見えた。


「笑うな。とにかく、おれはまだお前と千堂との結婚に納得してない! ちゃんと納得できるまでは、お前のそばを離れねーからな」

一貴さんのなかにいる透也が、私に向かって人差し指を突きつけてくる。

ひさしぶりに聞く強気な言葉にドキッと胸を高鳴らせたとき、私を真っ直ぐに見据えていた一貴さんの目がふーっと虚ろになった。


「え、透也?」

元恋人の名前を呼びながら、ぐらりと倒れそうになった一貴さんの肩を支える。


「だ、大丈夫?」

ぐったりと力の抜けてしまった一貴さんの耳元で声をかけると、しばらくして彼がゆっくりと目を開けた。