「え?」と思ったときには、一貴の指先にグイッと顎を持ち上げられていて、目を見開いた私と彼の唇が重なる。

約束が違う!

一貴さんの肩をつかんで抑えたけれど、彼は誓いのキスを触れるだけで終わらせず、神聖な教会の祭壇の前で堂々と口内に舌を入れてきた。

やけに長い誓いのキスに、参列者たちのほうから漣のようなざわめきが起きる。


「ちょっ……、一貴さ――!?」

何とか一貴さんの肩を押しのけてキスを終わらせると、まだ私と至近距離で向き合っていた彼がぺろりと舌先で唇を舐める。

その仕草を見た瞬間、私の顔から血の気が引いた。

嘘。まさか。だって、そんなことあるわけ――。

「誓いのキスはおでこで」と約束した一貴さんが、それを無視するわけがない。

だけど、頭に思い浮かんだあるひとつの可能性がどうしても信じがたい。というか、信じたくない。

それなのに……。